

車いすマラソンは午前9時5分、天候は晴れ、気温15.8度、湿度32.0%という気象条件のなか、全35選手(男子25、女子10)が東京都庁前を一斉にスタートしました。
男子は世界記録保持者のマルセル・フグ(スイス)が1時間21分09秒で3大会ぶり4度目の優勝を果たしました。レース序盤は2位に入った羅興伝(中国)とローテーションしながらレースを進めました。ローテーションとは風の抵抗によるペースダウンを避けるため先頭を交代しながら走る、車いすレースではよく見られる集団走法です。しかし、羅が遅れだした15㎞すぎからフグは一人旅となり、そのままフィニッシュ。2位の羅に約7分差をつける圧勝でした。
「優勝できて、とても満足しています。向かい風が強かったので、羅選手と二人で協力しあって走りました。もう少し一緒に走れたらよかったですが、一人になってからは大会記録(1時間19分14秒)更新を狙ってペースを維持することに集中しました。東京マラソンはコース途中で何回も大勢のランナーたちとすれ違えるので力をもらいながら走れました」
約1カ月前にグローブを新調したというフグ。グローブは車いすを漕ぐのに不可欠で、健常のランナーにとってはシューズにも相当するような重要な用具です。車いすランナーは自身の手の形や漕ぎ方などに合わせてカスタマイズしています。フグは、「これまではマラソンを走ると、手に痛みが出ることもあったが、今日は最後まで心地よく漕げて、疲労感も減った」と手応えを得た様子。
昨年のAbbott WMMシリーズでは東京マラソン以外の6戦に出場し全勝したフグは今季初戦となる東京で快勝し、「とてもいいスタートが切れた。今年もどのレースでも優勝を狙っていきたい」と、さらなる高みを見据えていました。
1時間28分08秒で2位に入った羅は15㎞まではフグに食らいつきましたが、「向かい風に体力を削られ、遅れてしまった」と振り返りました。タイムは昨年より2分以上伸ばしたものの、「冬季練習の成果としては物足りないタイム」と悔しさをにじませ、巻き返しを誓っていました。
3位には渡辺勝(TOPPAN)が1時間33分10秒で入りました。終盤まで4選手が激しく競り合うなか、ラストスパートで抜け出した渡辺が4位と2秒差で先着。それでも、「悔しさが強い」と振り返りました。冬季練習で用具の見直しも含めていろいろ試し、「自信をもって、この形でいくというものができた」そうですが、先週インフルエンザを発症。「作ってきたものがゼロになったように感じてメンタル的にもきつかった。不安のなかでスタートラインに立たなければならず、先頭争いに加われない消極的なレースになってしまった」と反省を口にしました。
女子も世界記録保持者のカテリーヌ・デブルナー(スイス)が実力を発揮。1時間37分15秒で大会2連覇を果たしました。昨年は初出場ながら大会新記録(1時間36分56秒)をマークし初優勝しています。
「難しいレースでしたが、優勝できて嬉しく思います。シーズン初戦で勝つことはとても重要だからです。強豪選手が多かったのでモチベーション高くレースに臨みましたが、優勝するためにはできるだけ早く集団から抜け出したいと思っていました」
その言葉通り、10㎞手前で後続を振り切ってからは、自身のもつ世界記録更新ペースで独走。風の影響もあって記録更新はなりませんでしたが、「後半はリズムの維持を意識しました。いいレースマネージメントができた」と充実の表情で語りました。
好走を支えたのはレーサー(競技用車いす)の目に見える位置に貼り付けられた手書きのメモ。新記録で走った昨年のレースペースなどがびっしりと書かれていました。毎回ではないそうですが、狙ったレースなどでは目標タイムの他、コース上の注意箇所や仕掛けどころなど、「覚えておきたいことを書いて貼っている」とのこと。強さの秘密が垣間見えました。
2位と3位はフィニッシュ前の接戦となりましたが、イーデン・レインボークーパー(イギリス)が1時間41分13秒で先着。3位は同タイムながらわずかの差で周召倩(中国)でした。レインボークーパーは2年前にも初出場で2位と好走しています。「東京は応援も素晴らしく、大好きなコース。今年の初戦で、トップレベルの選手たちと競り合って2位になれて嬉しい。冬場に積んできたきつい練習が報われました。いい経験になりました」と声を弾ませました。
副島正純車いすレースディレクターは、「フグ選手とデブルナー選手が強さを見せたレースでしたが、集団での競り合いもあり、選手たちは熱いレースを見せてくれました」とレースを総括しました。今年は海外から多くの強豪選手が出場しましたが、「もっと多くの選手に東京を走ってもらえるようサポートしていきたい」と話しました。
また、昨年から施行実施しているDuo Teamカテゴリーも車いすレースと同時刻にスタートし、3組全員が無事に完走しました。
※なお鈴木朋樹選手は出場辞退となりました。