2016年リオデジャネイロパラリンピックに水泳日本代表として出場したパラリンピアンで、アシックスのブランドアンバサダーを務める一ノ瀬メイさんが、東京マラソン2025で実施されたサステナビリティの取り組みにつながるイベント、大会前から大会当日の3日間ボランティア活動などに参加しました。
2月27日(木)〜3月1日(土)に東京ビッグサイトで開催された『VOLUNTAINER Meeting 2025~東京マラソン2025 みんなでつなぐサステナビリティ~』が東京ビッグサイトで開催されました。一ノ瀬さんは2月28日(金)のトークセッション「Asics presents もう一つのインタビューリレー!」において、視覚障がい*ランナーの町田宏さん、ガイドランナーの滝澤秀樹さんと対談。視覚障がいランナーとガイドランナーの信頼関係やボランティアの支え、応援のチカラ、そして町田さんは東京マラソンを完走すれば日本の全盲ランナーとしてはおそらく初めてアボット・ワールドマラソンメジャーズのSix Star Finisherとなることなどに触れました。
また、東京マラソン2025で初めて試行実施されたDuo Teamのカテゴリーに出場するためにアメリカから来日したショーン&シェイマス親子とも対談しました。これまで50回以上のマラソン大会に出場し、今回が初めての国際的なレースとなるライダーのシェイマスさんは「世界的な大会でインクルージョンを代表して走れることにとても意義を感じています。今からとてもワクワクしています」と笑顔。シェイマスさんが乗ったDuo Team用にカスタマイズされた車いすレーサーを後ろから押すお父さんのショーンさんも「障がい*のために一人では歩くことができないシェイマスが色々なことをするためにはどうしたらいいだろうかと、妻と話し合って考えてきました。彼の足となって自分も走ることで東京まで来ることができたことをとても誇りに思っています」と、感慨深げに話していました。
町田さんと滝澤さん、ショーン&シェイマス親子の想いを聞くことで、一ノ瀬さんも大きな刺激を得た様子。「どんな体だったとしても、色々な人が同じように参加できる。これは東京マラソンならではだと思いますし、どんどん広がっていくのが楽しみです」と、東京マラソンが持つ多様性、未来への可能性に目を輝かせていました。
同日にイベント会場で開催された「ASICS presents気分を上げるヨガ&サステナビリティ交流会」に参加しました。来場者と一緒に走る前やボランティアをする前に立ってできるヨガとストレッチに挑戦しました。
さらに、女子マラソンの元世界記録保持者であるポーラ・ラドクリフさん、テグラ・ロルーペさん、アトランタ五輪女子10000m7位入賞の川上優子さんらとサステナビリティに関する取り組みを話し合うトークセッションにも参加し、スポーツを通したサステナビリティについて意見を交わしました。
翌3月1日(土)にはプロギングイベントに参加し、早朝の浅草の街中をごみ拾いしながらランニングする「プロギング」イベントに参加。
「プロギング」とは、ごみ拾い(PlockaUpp)とジョギング(Jogging)を掛け合わせたスウェーデン発祥の新たなSDGs体験スポーツです。東京マラソンはコース沿道をはじめ、多くの方々の理解と協力に支えられています。その東京の街に感謝の気持ちを込め、「東京がキレイになる日。」をテーマに、昨年に続いて今年も開催し約130名のランナーやボランティアが参加しました。
午後からは再びVOLUNTAINER Meeting 2025会場を訪れ、東京マラソンを通した廃棄物(スタートエリアで回収した衣類からリサイクルをする工程の中でできる「ペレット」など)を使いオリジナルの応援グッズを作るワークショップに参加しました。
そして、大会当日の3月2日(日)はボランティアとして活動し、10.7kmフィニッシュ地点でジュニアのボランティアと一緒に完走メダルを渡すなどランナーと交流。
その後は東京マラソン2025のフィニッシュ地点にあるサステナブル応援エリア(バリアフリー応援スポット)から声援を送るなど、金・土・日の3日間、支える&応援する立場として東京マラソンに深く関わっていただきました。
大会終了後、一ノ瀬さんに、初めて参加した東京マラソンの印象、新たな発見、今後期待することなどについて東京マラソン財団社会協働事業本部の山本悦子がお話を伺いました。
「これまで参加した東京レガシーハーフマラソンもすごく感動したのですが、『パラリンピックは世界選手権とは全然違った』みたいな、そんな別格さを東京マラソンには感じましたね」と一ノ瀬さん。その中でも特に驚いたことが「応援することでランナーからもらえるパワー」だったと話します。
一ノ瀬さんはこれまでトップアスリートとして応援される立場。応援されてパワーをもらっているのはこっちなのに、応援に来ていただいた方やボランティアさんから『元気をもらった』とお声がけをいただくのが不思議でした」。しかし今回、応援する・支える立場を経験したことで、その「不思議」がストンと腑に落ちたとのことです。
「アスリートではない立場から大会に関わってみて、すごくその意味が分かったんです。ランナーの走り終わった後の表情とか、伴走者とペアで参加している方たちの信頼関係。それらを見ているだけですごいパワーをもらえました。スポーツの大会だけど、走るだけじゃなくて応援する、見る、支える、本当に色々な関わり方があって、それぞれに良さがある。パワーをもらうという意味では同じなんだなとすごく感じました」
そして一ノ瀬さんが感じたのは、東京マラソンはそうしたパワーがあふれる場というだけではないこと。対談した町田さんと滝澤さん、ショーン&シェイマス親子からエリートランナーまで、色々な目標を持った人たちが同じ場所に共存し、お互いに良い意味で影響し合っている――そんな東京マラソンだからこその多様性や、見る人・支える人も含めた"つながり"を強く感じたそうです。
大会を通した"つながり"に関しては、山本さんも「自分一人で超えていくこともあると思いますが、一人ひとりがつながっていくことで大きな力になり、『東京がひとつになる日。』が実現できるのではないかと、自分自身もマラソンをやっていてそう感じています」と実感。また、ショーン&シェイマス親子のランをその目で見ることができて「めっちゃ感動しました!」という一ノ瀬さんに対し、山本は「残念ながら走っているDuo Teamを最後まで一瞬も見ることができませんでした。しかし、別の運営スタッフからフィニッシュでの様子を聞いただけで、もらい泣きしてしまいました。話を聞くだけでも"つながり"を持てたと感じました」と、東京マラソンが生む"つながり"の新たな可能性を発見したとのことです。
東京マラソンは2027年に20回大会を迎えます。節目の大会に向け、そして、さらにその先へとサステナビリティの取り組み、チャリティ、ボランティア活動を広げていくために一ノ瀬さんが東京マラソンに期待すること、リクエストしたいことは?
「すでにある東京マラソンの取り組み、素晴らしさがもっと世に出ていくことがファーストステップとして見えたらいいなと思っています。今回、3日間参加させていただいて、『東京がひとつになる日。』というフレーズは、本当にそうだなと思いましたし、同じように思う人がもっと増えたらいいですよね。たくさんの人に東京マラソンの取り組みを知ってもらって、もっとみんなが『ひとつになる日。』になったらいいなと、すごく思いました」
一ノ瀬さんの3日間の活動と、そこから得た経験・新たな発見の言葉を聞き、「一ノ瀬さんに参加していただいて本当に良かったです」と山本。また、最後のアドバイスの言葉から、山本含め東京マラソン財団のスタッフは今後の取り組みに向けて大きなヒントをいただいた様子です。
一ノ瀬さん、本当にありがとうございました!
東京マラソン財団では、国際社会が取り組んでいる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、チャリティやボランティアなどの各種事業をはじめ、オフィシャルパートナーなどと連携して、「廃棄物削減」「環境保全」「DEI (ダイバーシティ〈多様性〉・エクイティ〈公平性〉&インクルージョン〈包括性〉)」を中心に、東京マラソンを通したサステナビリティへの取り組みを今後も推進していきます。
*一ノ瀬メイさんは「障害」を漢字表記で活動されておりますが、東京マラソン財団では「障がい」と表記で統一しています